内視鏡(腹腔鏡手術)について

内視鏡治療

内視鏡治療とは?

狭い部分や深い部分を詳しく見るために作られたものがほとんどで、内部の画像を撮影出来る構造になっています。
体内を見るためには光で明るくする必要があるため、ほとんどの装置には内部にライトを内臓しています。装置によっては組織を掴んだり操作するためのがついていることもあります。

内視鏡治療の種類

動物で使われる内視鏡には大きく二つの種類があります。
(1)胃カメラをはじめとする軟性内視鏡
(2)腹腔鏡をはじめとする硬性内視鏡

軟性内視鏡は消化管などの管腔臓器(筒になっている臓器)を内部から治療、検査する際に用いられることが多く、硬性内視鏡は腹腔鏡などの腹腔内臓器(お腹にある臓器)や胸腔臓器(胸の中にある臓器)の手術などに使われることが多くあります。
硬性内視鏡を用いた治療は腹腔鏡が最も応用されている医療ですが、人医療では多くの治療が行われてきている一方で動物医療においても内視鏡手術の有用性は認められており、痛みの軽減をはじめとする負担軽減に非常に医療を発揮します。
このページではさらに詳しく腹腔鏡手術に関して説明いたします。

 

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術の方法

腹腔鏡手術を行う際にはお腹に数ミリ(3-10mm)の小さな傷穴をつけ、そこからトロッカーと呼ばれるデバイスを入れます。これは後にその穴から鉗子(かんし)と呼ばれる手術器具を入れるのを助ける役割を持っています。その穴から炭酸ガス(二酸化炭素)を体内にいれることでお腹を空気で膨らませ、初めてお腹の中で手術が出来るようになります。

鉗子とはマジックハンドのような器具で手元で操作をするとお腹の中にある先端が動く仕組みになっています。種類があり、物を掴んだり、切ったり、つまんだりと様々なタイプの道具を使って手術を行います。手術をする人(術者)も助手、麻酔係も全てモニターも見て行います。通常であれば見にくい場所であっても細かく見ることが可能なのです。

腹腔鏡手術の適用

組織生検(検査) 肝生検 腎生検 膵生検 腸生検 リンパ節生検
避妊・去勢手術 卵巣摘出術、卵巣子宮摘出術 潜在精巣(陰睾)摘出術
腹腔鏡外科治療 脾臓摘出術 胆嚢摘出術 副腎摘出術 腎臓摘出術 肝臓部分摘出術 膵臓部分摘出術
腹腔鏡補助手術 膀胱結石摘出術 消化管異物摘出 門脈体循環シャント結紮術
予防的腹腔鏡手術 予防的胃固定術

腹腔鏡手術のメリット

傷口が小さい 手術のためには皮膚にポートと呼ばれる小さな傷口を開けてそこから器具を入れて手術を行います。開腹手術では数センチの傷が必要ですが、内視鏡を用いた場合には小さな傷口(3〜10㎜)で手術が行えます。
痛みが少ない 不妊化手術を対照とした研究により、術後の痛みが回復手術に比べて少ないという結果が出来ています。
術後の活動性の改善 不妊手術の術後の活動性(元気さ)を比較した研究では、回復手術では術前に比べて75%も減ったという結果になりましたが、腹腔鏡手術では38%の低下となりました。
ホルモンの低下 手術後にはストレスホルモンや炎症ホルモンが分泌されますが腹腔鏡手術では術後のホルモン量が減少することが確認されています。
消化管機能の早期回復 手術後には胃や腸などの消化管の運動が落ちます。不妊化手術のような簡単な手術でも回復手術では最低半日は正常に戻りませんでしたが、腹腔鏡手術では3時間で正常に戻りました。
その他 その他にも手術後の内臓の癒着の減少、傷口の感染症発生率の低下などが報告されています。

腹腔鏡手術のデメリット

手術時間が長くなる 一般的な開腹手術に比べて時間は長いですが、腹腔鏡の実績も増えて近年では手術時間は短縮されてきております。
コストが高くなる 機器、消耗品も人間用のものを使用するために公的保険のない動物医療においてはコストがかかってしまっています。飼い主さんへの負担をおかけしていますが、入院期間の短縮などにより一部抑えることは可能です。
高度な麻酔管理 通常の開腹手術よりは麻酔および呼吸の管理が複雑になります。当院では担当するスタッフの育成にも力を注いでいます。